不幸の活用

 

若いうちの苦労は 買ってでもしろとか

つらい体験こそが 精神を鍛えるとか

そういうきれいごと よく聞くけどさ

それで性格ゆがんじゃうことだってあるし

心の病気になっちゃうことだってあるし

だから 俺はやっぱり

つらい思いはしないで済むなら

それにこしたことはないと思うよ

戦争も 貧困も 病気も いじめも

受験で落ちるのも 親の離婚も

経験しないですむなら しないほうがいいんだよ

けどさ 経験しちゃったことは

もう どうにも消せないわけで

だったらもう 自分で動いて

その不幸を「活用」したほうがいいんだよ

だから俺も 活用することにしたよ

今年も 文化祭で漫才やるんだ

「親が離婚したヤツあるある」ってネタで

「授業中、先生うっかり俺のこと、

前の苗字で呼んじゃった~、

クラス凍る、先生おろおろ、

ウケてんの、ヤバイ、俺だけ~?」みたいな

こういう不幸ネタは

経験者にしか許されてない特権なんだよ

だったらそれこそ 活用しなきゃだよな

俺の漫才見て 親が離婚したヤツが

腹の底から 笑ってくれたら

俺 それだけでよかったって思えるよ

親が離婚して あぁ、よかったって