詩とSと私

 

詩を書いていることが

クラスの意地の悪い集団にバレた

「詩人とか、キモくね?」ってバカにしてきた

はじめは無視してたけど しつこくて

とうとう堪忍袋の緒が切れて

「そういうあんたらの性格がキモイし」って

言い返したら そいつらの指示で

他の子達まで 私によそよそしくなった

それからしばらく クラスでぼっちだった

放課後 昇降口で靴に履き替えてたら

突然 同じクラスのSが出てきた

無口なSとは しゃべったこともない

びっくりしている私に ぼそりと言った

「俺も、詩が好きだ」

それだけ言うと Sはぷいっといなくなった

私は 雷に打たれたように

しばらく その場に立ちつくしていた

はじめて 告白された女子の気分で

それから先も Sとは話すことはなかった

そのうち私は 恋の詩を書くようになった

半年後 Sが3組の女子に告白して

ふられたという噂を聴いた

心臓が とまるかと思った

ひとりで盛りあがってた自分が

ただただ惨めで バカみたいだった

卒業式 斜め前のSの横顔を見ながら

心の中で 悪態を吐き続けた

ふられたんだってね ざまぁみろっ

バチがあたったんだよ バチが

告白するほど好きな子がいるくせに

わざわざあんなこと言いに来ないでよ

こっちはひとりで勝手に盛りあがっちゃって

この心の傷 どうしてくれんのよ

でもさ あのひとことのおかげで

私 けっこう強くなれたよ

ぼっちのときも平気だったよ

あれから私 恋の詩を書くようになったよ

中学生だった頃の私にしか書けない

恋の詩を たくさん書いたんだよ

いつか 大人になって

どこかでばったり再会したら

二十四時間営業の

オシャレなカフェとか行って

中学生の私達には

できなかった「詩の話」を

したかった「詩の話」を

気がすむまで できたらいい

日が暮れても

夜になっても

夜を越えて

朝までだって