師走の大宮駅

 

年末の午後7時過ぎ

JR大宮駅の「豆の木」周辺は

スマホを手にした

若者達でごったがえし

その片隅で

八十前後と思われる老人達が

地面にボストンバッグを置いて

別れの挨拶をしていた

七人の男達は ジャンパーに運動靴で

どこか 労働者の雰囲気があった

かつて 共に働いた仲間達で

久しぶりに集まったのだろうか

抱きあい 肩をたたきあいながら

涙をこぼしている男達もいた

「次は、青森で飲もうな」

「それまで、死ねねえな」

「くたばっても、あの世でな」

口々に そう言いあうと

四人がボストンバッグを手に

新幹線乗り場へと向かった

四人がふりかえり 手を振ると

残りの三人が 両手を挙げて

子どもみたいに 大きく手を振った

今 スマホをいじる若者達の

はたして何人がこういう仲間を

八十になっても続く仲間を

現実世界に 持てるだろう

たったひとりでもいい

別れのさいに肩をたたきあい

涙をこぼしあう友を

持つ人は今 世界中に

いったいどれだけ いるのだろう