番人

 

なぜ ツバメは駅や家の軒先など

あえて 人がよく通る場所に

しかも そんなに高くないところに

巣をつくるのか 知っていますか

それは 巣の中の卵やヒナをねらう

カラスなどの敵から 巣を守るためです

ツバメは体が小さく クチバシも短く

決して 強い鳥ではありません

だから 巣のなかの卵と

卵から かえったあとのヒナ達を

敵から守り 育てていくために

人間の力を 借りているのです

カラスは 自分達より大きくて強い

人間が近づくと 逃げてゆきます

だからツバメは 人がよく通る場所に

巣を作って 子どもを守るのです

小学生の頃 その話を聞いたとき

野生動物に抱いていた罪悪感が

少し 軽くなった気がした

すべての野生動物の親は

人間という敵から 我が子を守るために

牙をむきだすものだと 思っていたから

「頭上からの糞に注意」

いつもの駅の 改札前の貼り紙

最近 余白に書きこまれた一文

「ヒナが無事かえりました」

私は立ち止まり 巣を見あげる

この駅を 利用する人間誰もが

巣の中の 卵を守る「番人」だった

今は ヒナ達を守る「番人」だ

どんな悪人も 詐欺師も

こんな ひねくれた私も