文化祭デビュー

 

うちの学校の文化祭は けっこうすごい

いろんな文化部のステージ発表や

クラスごとの出し物だけじゃなくて

有志のパフォーマンスもいろいろある

バンド、ギター弾き語り、カラオケ、

ダンス、チアー、漫才、コント、

ほかにも大道芸とかマジックとか

勉強もスポーツも見た目も

ぱっとしない地味なヤツでも

なにかひとつ特技があれば

文化祭デビューしてリスペクトされる

僕も本当は文化祭デビューしたい

でも ステージ系は絶対無理

歌も楽器も大道芸もマジックもできない

しゃべりは苦手だから漫才なんて論外

なによりステージに立つ度胸がない

でも 僕だって特技がないわけじゃない

自分で言うのもなんだけど

写真は特技って言えると思う

コンクールで賞をとったことだってある

でも 学校でそれは告知されないし

自分からは自慢になるから言えない

美術部はあるけど写真部はないから

学校のみんなに僕の写真を

見てもらえるチャンスがない

「なら、Y君が『写真部』立ち上げればいいじゃん」

休憩時間にお茶を飲みながら

家庭教師のF先生が あっさりと言った

そんなこと 発想になかったからびっくりした

でも 誰も入部してくれないかもしれない

バカにしてくるヤツがいるかもしれない

「いいじゃん、ぼっちだって、バカにされたって。

とにかく写真部つくっちゃえばさ

文化祭で教室ひとつ、もらえるわけでしょ。

そこでY君の写真、ズラっと展示すんのよ。

ビシッとオシャレな額に入れて、アートっぽくね。

ぼっちのほうが、いっぱい飾れて個展みたいじゃん。

あたし、初めてY君の写真見せてもらったとき

めっちゃ驚いたでしょ? あれ、嘘じゃないもん。

これまで、写真なんて全然興味なかったけど

写真ってすごいやって、あの時初めて感じたの。

そう感じる人は、あたしだけじゃないよ、絶対。

Y君の写真見て、入部する子だっていると思う。

だからさ、まずは先生に相談してみなよ」

その日の夜

興奮して 寝つけなかった

文化祭で 僕の写真がどこかの教室に

ズラリと展示されている様子を

想像するだけで 眠れなかった

F先生の言葉が うれしくて

うれしくてうれしくて 眠れなかった