中学生の私に

 

もし 時空を超えて届く手紙を

一通だけ書いて出せるとしたら

天国の誰かではなく

未来の自分へでもなく

中学生の 私に書きたい

狭い世界を生きていた あの頃の私に

ほらほら いつまでそんな顔してんのよ

どうせあんたのことだから

学校の人間関係でなんかあったんでしょ

ムシされてんの? ハブられてんの?

はいはい、あぁそうですか

「女子中学生あるある」ね

まぁ 十四歳のあんたにはそういうのが

相当つらいってことぐらい わかってるけどさ

こんなに深い心の傷を抱えたまま

この先 生きてくのがつらいって?

あのね そんな心配ドブに捨てていいから

あんたがこれからすることになってる

恋のパワーのほうが 何倍も深いから

恋って 驚くほど自分も変わるのよ

それまでは消し去りたかった自分の過去も

ぜんぶ肯定できるようになるの

だって この人生を生きてきた自分じゃなきゃ

この恋に たどりつかなかったんだから

そういう恋が あんたを待ってるんだから

ひとつ残らず体験しなくちゃでしょ

ちなみにあんたはね 高校で初カレできるけど

舞い上がっちゃって 勉強手につかなくなって

成績ガタ落ちするから気をつけなさいよ

デートで着る服と靴は

前日にちゃんと決めときなさいよ

泣ける映画観るときは

鼻かむ用に箱ティ持参しなさいよ

冬の海は風邪ひくからやめなさいよ

別れのつらさは 時間が癒してくれるから

新しい恋のスタートだと思って

早めに気持ち 切り替えなさいよ

しなきゃよかった恋なんて ひとつもないから

その瞬間、瞬間の想いを 大切にしなさいよ

最終的に あんたはね

あんたの詩の中の情景を絵に描く男と

共に生きていくことになるから

この先も 詩は書き続けなさいよ