ハルカ

 

昼休み 女子五人で話しているとき

隣のクラスの ハルカの話になった

ハルカは美人で 勉強もできて

しかも優しいから すごくモテる

「あの子ってさ、相当『自分好き』だよね」

ひとりが言ったら 次々と

「あたしも、それ感じたことある」

「ワタシ、性格もいいんです、みたいな?」

一気にハルカの悪口大会になった

ハルカとは 去年同じクラスだった

本当に誰にでも 優しい子だった

なのに あたしは悪口にのっかった

「ワタシ、欠点ないんです、みたいな?」

なんとなく そのほうが

盛り上がると思ったから

なにも言わないでいると

自分だけ 浮きそうだったから

いや たぶん それだけじゃない

やっぱりあたしは 心のどこかで

ハルカみたいな子が妬ましいんだ

美人で優しくて 勉強もできて

すごくモテる ハルカみたいな子が

学校帰りに ハルカと会った

二人で 並んで歩きながら

なんだか後ろめたくて

下を向いたまま ぶすっと言った

「めっちゃ寒い」

ハルカは 鞄から手袋を出して

「はんぶんこ」と笑って

あたしにひとつ かしてくれた

ハルカの横顔は やっぱりきれいだった

自分の薄汚さが 哀しかった