涙のバレンタイン

 

一年の秋から ずっと好きだったNに

勇気を出して チョコを差しだしたら

受け取ってもらえなかった

「ごめん」って 下向いたまま言われた

つらくて 心臓が止まりそうだった

「…もしかして、好きな人いる?」

やっとの思いで それだけ聞いたら

「そういうわけじゃない」って言われた

好きでもない女子から

本気のチョコを受け取るのは

とにかくやだってことらしい

捨てるのはもったいなくて

家に持って帰るのも嫌で

公園のベンチに座って

ひとりでもぐもぐ食べながら

涙といっしょにぼろぼろと

いろんな思いが こみあげてきた

べつにいいじゃん チョコ受けとるくらい

つきあってとか言ってるわけじゃないんだからさ

とりあえず受け取ってくれたっていいじゃん

あっちこっち いろんな女子から

もらいまくってる男子だっているし

いらなければ誰かにあげればいいんだし

こっそり捨てたって いいんだからさ

そんなことを思いながら

いっぽうで わかってもいた

Nは 誰かが本気でくれたチョコを

誰かにあげたり 捨てたりなんてできないこと

Nは 好きでもないあたしに

無駄な期待を させたくなかったこと

Nの そういう変に真面目なところを

あたしは 好きになったんだと