出席停止と不登校と教員
私は 中学校の教員です 中学生の頃 陰湿ないじめが原因で 不登校になった経験があります 勇気をふり絞って いじめを訴えても 学校は加害者を適当に注意しただけで 事態はむしろ 悪化しました
だから 決めたんです 将来は教員になって いじめの加害者に 「出席停止」という制裁を与えることで 少しでも いじめを防ごうと
でも 教員になってすぐに思い知らされました いじめという複雑な集団犯罪で 特定の生徒だけを出席停止にすることが どれほど難しく 危険なことかを
まず 加害者集団の誰までを 出席停止にするかの線引きが難しいのです 主犯格が誰かを調べていくうちに 実際にいじめ行為をしていた実行犯達は 実は「真の主犯」にやるよう言われて やらされているケースもあります でも その事実を学校に打ち明けたら 今度は自分がやられると怯えて 真実を言えない場合だってあるのです
また 加害者と被害者の立場が 逆転しているケースもあります 加害者のAが 過去に自分をいじめたBを 立場が逆転した今 いじめている場合 それは いじめというより復讐なので Aだけを出席停止にはできません
それでも私は 昨年の秋に おとなしくて弱いKへのいじめを 指導後も 辞めなかった四人を 出席停止にすべく 本気で動きました いじめの証拠も 提出しました その間 怯えて弱りきっていたKには 学校を休んでいていいと言いました 私は学校とも 加害児童の保護者とも 教育委員会とも 対立しました
結局 加害者への「教育的配慮」から 出席停止は実現せず 私は負けました Kは転校することになりました 結局 なにもできなかったことを 詫びながら 涙をこぼす私に Kが 笑顔で言いました
あのとき 先生が僕を 学校っていう檻から逃がしてくれて 僕の代わりに戦ってくれたから 僕、絶望せずに済んだんだよ 死なずに済んだんだよ